ノキ弁日誌

鹿児島で働く新61期のノキ弁が,仕事や法律について考えたことを吐出します。                         有用なアウトプットを生産すべく試行錯誤の日々の記録です。

2010年4月26日月曜日

シマ弁日誌

とりあえず,移行しますた。
http://shimaben.blogspot.com/
今後はシマ弁日誌でよろしくです。

2010年3月23日火曜日

いよいよ出航

あと,3時間少しで,船が出ます。
そろそろ車を積みに港に行く時間です。
自宅と事務所を3日で畳むのは,正直大変でしたが,
引越し経験のの豊富な母の手助けもあり,
何とか徹夜もせずに終わりました。
開けるのはひとりなので,ひと月はかかるでしょうが(汗

修習地の奈良から鹿児島に来るとき,
自分はどんな気持ちだったのか,
たった1年ちょっと前のことなのに,覚えていません。
でも,今よりずっと不安が強かったのではないかと思います。
幼少期から10年住んだ土地とはいえ,
10数年振りに帰ってきて,自分で稼がなくてはならないノキ弁として,
三十路での社会人1年目を迎えたのですから。

奄美に出航するにあたって,
今の心境は,不安と期待が半々くらいでしょうか。
前途洋洋ではないけれど,まさに海に出る感覚です。
これからどんなことが待ち受けているのか,
楽しみな自分も確かにいます。

自分にできることは限られているけれども,
自分にしかできないことも,何かある。
そう思って,島での仕事と生活を選びました。
今回の旅立ちにあたり,普段は意識していなくても,
本当にいろいろな方が,自分を見てくれ,
応援してくれていることを知りました。
その期待に少しでも応えられるよう,
一日一日を大切にしていこうと思います。

そんな訳で,「ノキ弁日誌」は今日で終わり。
次回からは「シマ弁日誌」として,更新します。
奄美にお越しの際は,是非あまみ法律事務所にもお立ち寄りください。
美味しいコーヒーをご用意してお待ちいたしております(笑


2010年3月16日火曜日

進捗状況

だいぶ形ができてきました。
思ったより早い展開でひと安心。
一応21日完成の予定ですが,
何とか間に合うかなぁ。

残り1週間を切りました

ご無沙汰です。
現事務所での執務も今週いっぱいで終わりです。
毎日引き継ぎの調整で忙殺されております。
週末になったら猛ダッシュで荷造りして,
週明けの連休にはもう奄美に引っ越します。


こちらの事件も20件ほど持っていくことになりました。
依頼者への連絡は大体終わって,
連日必要な打ち合わせをこなしていますが,
相手方への通知が遅れ気味。。。
間に合うのか不安ですが,まぁ,やるしかないですね。


自分持込が約20件(そのうち訴訟が5件とこれから提訴(汗)が3件くらい),
それに法テラス奄美からの引継ぎ案件が15件,
さらに名瀬支部での管財事件が2件。
最初から仕事があるのは結構なことですが,
最初のうちに新規をどれだけ受けられるか,
やや不安が残ります。
おそらく半年くらいは鹿児島と行ったりきたりでしょう。
公設への赴任の仕方としてはよろしくないんだろうけど,
ノキ弁の身で引継ぎとかもできず,
また地理的に近いこともあって基本的には持っていくことにしました。
過払訴訟なんかは同期の複代理で乗り切りたいところです。
って同期の誰もこんなブログ読んでないか。。。


事務所のほうは着々と形になっているようです。
今回,離島という特殊事情と,
工期の余裕がほとんどなかったので,
既成のパーテションを使わず,
大工仕事で部屋を作ってもらいました。
自由度と素材感がかえって良かったと思います。
いざ着工となってから予算的に厳しい折衝が続いていますが,
何とか想いが形になればいいなと願ってます。




今回の事務所のコンセプトは,「カジュアル」。
トラブルを抱えた相談者が,気後れすることなく,
足を向けられる場所を目指しています。
イメージとしてはカフェや美容院のような空間。
法律事務所に行かねばならないというず~んと重い気持ちを,
少しでも和らげられたら,というのがデザインのコンセプトです。
弁護士会から記念品をいただけるというので,
前々から欲しかったコーヒーミルとコーヒーメーカーの導入も決めました。


その裏で,スタッフと弁護士の業務の効率化と機能性も追及しています。
おそらく1年くらいのオペレーションでだんだんと,
望む形になるものだとは思いますが,
今でも斬新な空間が生まれつつある予感はして,とても楽しみです。


一方で,法律事務所の競争力はいうまでも無くハードではなくソフトで決まります。
ソフトとは,①ヒューマンリソース,②ITを含めた業務システム,
③そしてオペレーションです。
②については,今回大きな投資を決断しました。業務管理システムの導入です。
これを振る活用できれば,業務が相当効率化するはずと期待しています。
①については,経験者を2名確保できたので,
スタッフとして自覚とプライドをもって仕事をしていただけるような環境をつくるのが,
所長である僕の務め。
③は,スタッフと僕とで日々カイゼンに取り組んで生きたいと思います。


「何か困ったことがあれば,あの事務所に行けば良いよ」と認められ,
そして実際きてくださった方が,少しでも肩の荷を降ろして帰っていける,
そんな場所にしたいと思います。


まだまだ駆け出しのノキ弁に何ができるかは分かりませんが,
依頼者の希望をできるだけ聞き入れて,
島の中での妥当な落としどころを探っていければ,
僕が赴任する意味はあるのではないでしょうか。
そして,2年ないし3年後には,
奄美群島全体に良質なリーガールサービスを提供したい,
そんな希望も持っています。
その先には,奄美出身者の多い関西への進出や,
東京,鹿児島とのネットワークも視野に入れています。
いずれにせよ自分が島を去るときに,良い仕組みが残るよう,
日々の仕事だけでなく色々なことにチャレンジしていきたいと思います。
あまみ法律事務所が,奄美群島において,みんなに開かれた司法インフラとなること,
これが今回の赴任の最終目標です。


さてさて,どうなることやら。
不安と期待に身悶える春です。






2010年2月25日木曜日

犯罪被害者支援

犯罪被害者支援は,近年弁護士の活動領域として,
広がりをみせている分野です。
刑事手続きにおける被害者参加が法定されてきており,
国選被害者参加弁護士という制度もできました。


私自身,被害者支援をしていて,
被害者を弁護士がサポートすること自体の意義は,
十分に感じているところです。
被害者の視点から見れば,被疑者・被告人には,
刑事弁護人として弁護士がついているのに,
自分はひとりであるとの不安ないし不満があります。
支援弁護士がつくことで,この点は解消されるわけです。


しかしながら,刑事訴訟において,
従来の刑事弁護人に対立する立場に同じ弁護士をもって置くということに,
違和感を覚えなくもありません。
以前から,悪いことをした「犯罪者」を弁護する弁護士はけしからん,
という一般市民感覚は根強くあります。
これに加えて,被害者参加弁護士として検察官の側に立つ弁護士が,
刑事弁護もするというのは,一般市民の眼にはどのように映るのでしょうか。
また,刑事弁護人として被告人のために最善の努力をする弁護士が,
被害者参加弁護士として被害者ないしはその遺族を代弁して,
被告人に重い処罰を求める活動をすることは,
外部から見て矛盾してると感じられないのでしょうか。


確かに,民事においては,あるときは原告になりまた次の機会には被告になる,
そんなことは当たり前です。
どんな立場であれ依頼者の権利を実現するために最善を尽くし,
紛争を解決するのが,民事における代理人たる弁護士の仕事です。
しかし,刑事弁護においては,その半ば公的役割から,
そう簡単に割り切れないものもあるのではないかと思います。
特に,刑事弁護に情熱と熱意をもって,信念を固めてきた弁護士ほど,
悩みは大きいと思います。


私は今のところ,参加弁護士として公判に関与したことはありませんが,
刑事弁護人としても,相手方に弁護士がついて手続きに関与してくるケースでは,
やりにくさを覚えないといえば嘘になります。
弁護士会の中でも色々な見解があります。
弁護士自治ないしは刑事弁護を崩壊させるための陰謀論だとまでは言いませんが,
ある意味では,刑事弁護を最後の拠りどころとしてかろうじて存在していた,
弁護士同士の一体感が損なわれつつあることを,個人的には危惧します。


検察は以前から,「被害者とともに泣く」ことを標榜していたのですから,
少なくとも,刑事訴訟手続きにおける被害者のサポートは,
検察官もしくは検察庁が行うのが筋であるような気がします。


犯罪被害者支援の幅は広く,弁護士ができることは限られています。
警察,検察,犯罪被害者センターなどが連携して,
よりよい制度を構築する必要があるのではないでしょうか。


民事

2010年2月24日水曜日

屋久島雑感2

鹿児島に帰ってさっそく,KULSのニューズレターへの寄稿を依頼される。
人使いが荒いと思いつつ,隙間時間でやっつけました。
せっかくだからここにも転載します。

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リーガルクリニックA@屋久島に参加して

平成22年2月19日から22日かけて,屋久島の3会場で無料法律相談を行いました。
学生にとっては,日頃の学習の成果を地域社会に還元する貴重な機会であるとともに,
将来携わる法曹実務に触れることで,今後の学習目標を再確認する場でもあったと思います。
私見ですが,法科大学院における全ての学習は,新司法試験に繋がるものでなくてはなりません。
これには,教員側の創意工夫はもちろん,特に直接の試験科目ではない科目においては,
学生が主体的に目標を設定し,授業から新司法試験に活かせる知識・経験・思考を学び取る姿勢が不可欠です。
今回のリーガルクリニックを,新司法試験にどう活かすか。
私が感じたことを,以下簡単に述べたいと思います。
① 事実の整理
  試験問題とは異なり,生の相談で相談者から語られる事実は,所与のものではありません。
 実務家は,常に立証を意識して事実の確定に努めます。
 学習段階では軽視されがちな事実の重みを感じることが出来たのではないでしょうか。
  ただし,試験問題を解くにあたっては,問題文の趣旨をよく理解したうえで,
 出題者が想定していない事実に足を取られることがないよう,注意を喚起しておきます。
  また,相談者から流れ出る事実の洪水を整理し,記録するスキルについても,目の当たりにしたことと思います。
 相続関係図に代表される,複雑な事実を法律関係が分るように図表化する技術は,
 実務のみならず試験においても必須ですので,これを機会に習得してください。
② 要件事実の意味
  事実の聞き取り及び整理に際して,法律家の参照枠組(Frame of Reference)は要件事実です。
 普段,ある種のパズルとして捉えがちな要件事実ですが,
 相談の場において生の事実を整理する有効なツールであることを感得できたのではないでしょうか。
 学生のみなさんの聞きとりが,相談者に振り回されてわき道にそれてしまいがちなのは,
 この参照枠組みをしっかり意識できていないことが主因であると感じました。
 事前準備で何を聞くべきかを検討する際には,要件事実をしっかりと押さえることがまずもって重要になります。
 今回,時間的制約の問題もあるのでしょうが,この点の準備がやや不十分であった印象を受けました。
 生きた要件事実学習の場として,積極的に活用して欲しいと願います。
③ 解決手段としての各制度の有機的理解
  実体法の学習は,つまるところ法定の要件効果を基盤とした権利の存否の問題に帰着します。
 他方,手続法の学習では,やや細かい手続き的論点に目が行きがちです。
  しかし,現実の紛争解決は,多様な法制度を駆使して実現されるものです。訴訟のみならず,調停,審判又はADRなど,
 紛争解決システムの全体像を頭に置き,適切な手段を選択することが求められます。
 そのためには,各手続きの特徴とメリットデメリットをしっかりと理解し,相談者に分りやすく説明することが肝要です。
  手続き選択は新司法試験では,主に,行政法で問われるところですが,
 民事でもどのような手続きで解決するのかのイメージを持つことは,見えないところで答案に具体性を与えると思います。
④ タイムマネジメント
  今回のクリニックは,学生にとっては,かなりタイトスケジュールの中で行われました。本当に大変だったと思います。
 しかしながら,新司法試験においても,最後の最後はタイムマネジメントにかかってきます。
 与えられた時間の中で,必要十分なアウトプットを生産することは,試験でも実務でも,必須のスキルです。
 所与の時間に対して不満を述べるのではなく,その時間をどう活用すれば要求水準を満たせるのかというトレーニングとして,
 前向きに捉えたうえで,取り組んでみてください。
  また,法律相談におけるタイムマネジメントについては,相談内容の質と量を常に意識して,緩急をつけた柔軟な姿勢が求められます。
 相談者の話を遮る形になる場面もありますが,トータルで時間内に満足を得るという観点から行われていることに注目して欲しいところです。
 切るべきところは思い切って切る実務家のテクニックは,メリハリのある答案を書くに当たっても参考になると思います。
⑤ 相談者の希望にフォーカスすること
  実務家が相談に当たってまず把握しなければならないのは,論点でも判例でもなく,「相談者が何を望んでいるか」です。
 それが分らなければ,どの事実を聞けばよいかも分りません。これは,新司法試験に置き換えれば,「出題趣旨」を把握することです。
 事実の中に論点が見えたとしても,出題者が何を望んでいるかを把握しないことには,評価される答案は書けません。
 出題者の考えを念頭において,何を書いて欲しいと思っているのかを常に意識できれば,いわゆる論点羅列型の答案は生まれません。
⑥ プレゼンテーション
  今回,学生の力不足をいちばん感じたのがプレゼンテーションです。口頭発表の機会は普段あまりないでしょうし,
 新司法試験にも後述はありません。それでも,事前知識ゼロの聞き手に,簡潔に事案を理解させる能力は答案でも求められます。
 一読して試験問題が想像できる答案が優れた答案だと思います。もちろん,読み手の試験委員は問題作成者でもあるわけですが,
 問題文中で当然の事実を当然の事実として指摘するのと,分ってるだろうとの思い込みでまったく触れないのとでは,
 印象はだいぶ異なります。読み手を意識しない答案は,やはり良い評価には繋がりません。
  また,言葉遣いについても,色々な批判が出ました。法律家は言葉によって紛争解決するのが仕事ですから,
 その武器である言葉はクリスタル・クリアでなければなりません。あいまいな表現を避け,厳密な言葉遣いを意識してください。
 事実が曖昧であれば適切な場合分けが必要ですが,主張が曖昧な場合,知識不足か論理の破綻と考えられます。

 以上,思いつくままに述べましたが,実務科目であるクリニックにおいても,新司法試験に役立つものは,たくさんあります。
せっかく,時間と労力をかけて授業に取り組むのですから,そこから吸収できるものは貪欲に吸収し,試験に活かしてください。
法科大学院と新司法試験との関係は微妙なところもありますが,学生の意識しだいでは,かなりリンクすることが可能だと思います。
もったいない精神を忘れずに,今後の授業にも積極的に取り組まれることを祈っています。

2010年2月22日月曜日

屋久島雑感

鹿児島大学ロースクール(KULS)の
リーガルクリニックに同行して,
3泊4日で屋久島に行ってきました。
一応非常勤講師としてのお仕事です。
学生と一緒に島内の数箇所を回って無料法律相談。
広報を頑張ったらしく,それなりに予約が埋まっていました。
学生にとってはかなりハードな授業だと思う。
これが必修というのは,しんどいかもしれない。
でも,選択だと人が集まらないだろうしなぁ。
(写真は隙間時間で唯一観光できた千尋の滝)


以下,雑感。

① 法律相談
修習指導のベテラン弁護士から「法律相談が一番難しい」
と教わって,仕事を始めてからも,一番しんどいと思ってたけど,
改めてそのことを認識しました。日ごろ人に見られないので,
今回の同席で最初のころの緊張感を思い出した。
今回,二人の弁護士の相談を見ることができたのも良かった。
やはりそれぞれにスタイルがあり,正解はない。でも,相談者のの評価は平等。
相談者に対する満足度調査は自分でもやってみたい。

② 司法過疎
年に1回の無料法律相談だからこそ,
相談する決心がつくというのは新たな発見。
受任まで考えたら,常駐のほうが良いとは思うが,
巡回ゆえのメリットというものもあるのだ。
例えば十島村に比べて,屋久島には簡裁があるからまだまし,
という司法過疎の根深さ。
ビジネスとして成立することが必要条件だが,
奄美をみれば,それだけで十分条件を満たさないことも明らか。 

③ 司法制度改革
現役受験生に合格者数の適正水準を問うのは酷に過ぎる。
答えが得られたとしても,自分が合格できる水準とうものでしかないだろう。
受験生の気持ちは受験生にしか分からないのだなぁ。
他方で,当事者である法曹志望者が,
いまだにこの国の司法制度全体に対するビジョンを持ち得ないこと自体,
構造的な問題は何も解決していないことの証左ではある。
折悪しく不況と重なって,不合格者が確実に生まれる制度そのものの是非が,
改めて問われているが,当事者からの声は聞こえてこない。
個人的には三振した人が法務省か最高裁の前で焼身自殺したりする可能性を,
かなりリアルに想像していたのだが。
みんな自分のことでいっぱいいっぱいだろうし,落伍者という負い目が口を重くするのだろう。
合格者ですら就職先がない状況で,不合格者の問題には手が届きにくい現実。
声を上げられない状況に加担しながら,声を上げないことを指摘するのは,残酷だ。

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